2026年10月31日

「いびきがうるさい」と家族に言われる、しっかり寝たはずなのに日中に強い眠気がある、朝起きると頭が重い。こうした症状の裏に、睡眠中に呼吸が何度も止まる「睡眠時無呼吸症候群」が隠れていることがあります。放っておくと、高血圧や心臓・脳の病気、居眠り運転などにつながるおそれがありますが、自宅でできる簡易検査で調べることができ、CPAP(シーパップ)などの治療で睡眠の質の改善が期待できる病気です。この記事では、病気の仕組み、体への影響、検査の流れと治療について、慶元クリニックが解説します。

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり、浅く弱くなったりすることを、一晩に何度もくり返す病気です。英語の頭文字をとって「SAS(サス)」とも呼ばれます。
多くは、眠っている間にのどの空気の通り道(上気道)が狭くなったり、ふさがったりすることで起こります。これを「閉塞性睡眠時無呼吸」といい、睡眠時無呼吸症候群の大部分を占めます。
眠ると、のどのまわりの筋肉がゆるみ、舌の付け根が下がって空気の通り道が狭くなります。そこへ次のような条件が重なると、通り道がふさがりやすくなります。
日本人はあごが小さめの骨格の方が多く、太っていなくても起こることがあります。
医学的には、10秒以上呼吸が止まる状態を「無呼吸」、呼吸が浅く弱くなる状態を「低呼吸」といいます。この2つが1時間あたり何回起きているかを表す数値(AHI:無呼吸低呼吸指数)で、病気かどうかと重症度を判断します。目安は次のとおりです。
重症の方では、1時間に30回以上、つまり2分に1回以上のペースで呼吸が止まったり浅くなったりしていることになります。
日本のガイドラインでは、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸は、成人男性の約2割、閉経後の女性の約1割にみられると紹介されています。それでも、多くの方は眠っている間のことなので自分では気づかず、治療を受けていないと考えられています。

睡眠時無呼吸症候群のサインは、「寝ている間」と「起きている間」の両方に現れます。
呼吸が止まるたびに体は酸素不足になり、脳は呼吸を再開させるために、本人が気づかないほど短く目を覚まします。これが一晩に何十回、何百回とくり返されるため、長く寝ているつもりでも、深い眠りがほとんどとれていない状態になります。
日中の眠気は「忙しいから」「年齢のせい」と思われがちですが、毎日続く場合は一度チェックしてみることをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群は「いびきがうるさいだけ」の問題ではありません。呼吸が止まるたびに血液中の酸素が減り、それを補おうと交感神経(体を緊張させる神経)が働いて、血圧や心拍数が上がります。この負担が毎晩、何年も続くことで、全身にさまざまな影響が出てきます。
高血圧や糖尿病で通院している方の中には、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることが少なくありません。「お薬を飲んでいるのに血圧がなかなか下がらない」という場合、睡眠中の呼吸の問題が背景にあることもあります。
日中の強い眠気は、交通事故や仕事中の事故につながるおそれがあります。睡眠時無呼吸症候群の方は、そうでない方に比べて交通事故を起こしやすいことが、多くの研究で報告されています。車を運転するお仕事の方や、毎日車を使う方は、とくに注意が必要です。

「検査」と聞くと入院を想像されるかもしれませんが、最初の検査はご自宅で、いつもどおり眠りながら受けることができます。当院では、問診から簡易検査、その後の治療まで対応しています。
いびきの様子、日中の眠気、朝の頭痛、血圧や持病の有無などをお伺いします。ご家族からいびきや呼吸の止まり方を聞いておいていただくと、とても参考になります。日中の眠気の程度は、質問票(エプワース眠気尺度)で確認します。
小型の検査機器をお貸しし、ご自宅で一晩、眠っている間に装着していただきます。
痛みはなく、いつもの寝室で、いつもの時間に眠るだけです。翌日に機器を返却していただき、結果をもとにAHIなどの数値を確認します。数値によっては、次の精密検査が必要になります。
簡易検査で、さらに詳しく調べたほうがよいと判断した場合は、脳波なども同時に測る精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を受けられる医療機関をご紹介します。
検査の結果と、眠気などの症状、高血圧などの合併症をあわせて、治療が必要かどうか、どの治療が合っているかを判断します。

中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療の中心となるのが、CPAP(持続陽圧呼吸療法)です。寝るときに鼻にマスクをつけ、小型の装置から一定の圧をかけた空気を送り込むことで、のどの空気の通り道が狭くなるのを防ぎます。
日本では1998年に健康保険が使えるようになり、現在では50万人ほどの方がCPAP治療を受けているとされています。保険でCPAPを始める目安は、簡易検査でAHI40以上、または精密検査でAHI20以上(眠気などの症状があるもの)です。
CPAPを毎晩きちんと使うことで、いびきや無呼吸が減り、日中の眠気や朝の頭痛の改善が期待できます。効果の感じ方には個人差があります。
CPAPは、病気そのものを治すお薬ではなく、使っている間に呼吸を助ける治療です。そのため、毎晩続けて使うことが大切です。
肥満がある方は、体重を減らすことで無呼吸が軽くなることがあります。寝る前の飲酒を控えることも大切です。高血圧や糖尿病をお持ちの方は、睡眠時無呼吸の治療とあわせて、生活習慣病の管理を続けていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間にのどの空気の通り道がふさがり、呼吸が止まったり浅くなったりすることを一晩に何度もくり返す病気で、自分ではなかなか気づけないのが特徴です。大きないびきや呼吸の停止、日中の強い眠気、朝の頭痛は大切なサインで、放っておくと高血圧や心臓・脳の病気、居眠り運転などにつながるおそれがあります。最初の検査はご自宅で眠りながら受けられる簡易検査で、診断がつけばCPAP治療などで睡眠の質を取り戻すことが期待できます。ご家族にいびきや呼吸の止まりを指摘された方、日中の眠気が続いている方、血圧がなかなか下がらない方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
・日本呼吸器学会、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」班 監修「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」南江堂、2020年
・Tsuneto Akashiba, et al. Sleep Apnea Syndrome (SAS) Clinical Practice Guidelines 2020. Respir Investig. 2022;60(1):3-32. doi:10.1016/j.resinv.2021.08.010
・Stephen Tregear, et al. Obstructive sleep apnea and risk of motor vehicle crash: systematic review and meta-analysis. J Clin Sleep Med. 2009;5(6):573-581.
・日本呼吸器学会「呼吸器の病気:睡眠時無呼吸症候群(SAS)」(https://www.jrs.or.jp/)
・厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)