2026年8月26日

昨日まで何ともなかったのに、朝起きたら肛門のふちに硬いしこりができていて、座るのもつらいほど痛い。それは「血栓性外痔核」かもしれません。痔の中でも急に強い痛みが出るタイプで、多くは自然に落ち着きますが、痛みが強い場合は診察したその日のうちに処置で楽になる方法があります。慶元クリニックが、正体と対処法を解説します。

痔にはいくつかの種類があり、大きく分けると「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3つになります。このうち最も多いのが痔核ですが、実は痔核も、できる場所によって性質がまったく違います。
肛門の内側、直腸との境目より奥にできるものを内痔核といいます。この部分は痛みを感じる神経が乏しいため、内痔核の主な症状は痛みではなく、排便時の出血や、いぼが肛門の外に出てくる脱出感です。「出血して驚いたけれど痛くはない」という場合、多くは内痔核です。
一方、肛門の外側、皮膚に覆われた部分にできるものを外痔核といいます。この部分には痛みを感じる神経がしっかり通っているため、腫れると強い痛みが出ます。「痛くて座れない」「歩くたびに響く」といった訴えの多くは、こちらの外痔核によるものです。
同じ「いぼ痔」という言葉でくくられていても、内側か外側かで症状も、経過も、必要な処置もまったく異なります。ご自身の症状がどちらに当てはまるのかを知っておくと、受診のタイミングを判断しやすくなります。

外痔核の中でも、急に強い症状が出るのが「血栓性外痔核」です。肛門のふちの静脈に血のかたまり(血栓)ができ、それによって血管が急激に腫れ上がった状態を指します。
特徴は、何といってもその出方の急さです。前日まで何の自覚もなかった方が、朝起きたら肛門のふちに硬いしこりを触れ、座ると激しく痛む、という経過をたどることがよくあります。しこりは小豆大からうずら卵ほどの大きさまでさまざまで、青紫色に見えることもあります。押すと強く痛み、歩行や排便のたびに響くように痛むのも典型的です。
内痔核と違い、出血が主症状になることは多くありません。ただし、腫れが強くなって皮膚が破れると、血栓が出てきて出血することがあります。破れた瞬間は驚かれる方が多いのですが、実はその後、痛みが急に軽くなることも少なくありません。
血栓性外痔核は、多くの場合は数日から2週間ほどかけて血栓が体に吸収され、自然に痛みが引いていきます。ただし、腫れが引くまでの数日間の痛みは、日常生活に大きく支障をきたすほど強いことがあります。そして、その痛みのピークは発症してから2〜3日目に来ることが多いため、「様子を見ているうちにどんどんつらくなった」と感じる方が多いのです。
「痛い痔」と一口にいっても、切れて痛むのか、腫れて痛むのかで原因は別物です。血栓性外痔核の場合は、痛みと同時に触ってわかる硬いしこりがあることが手がかりになります。
なお、痛みの出方が似ていても、肛門周囲膿瘍という別の病気のこともあります。こちらは肛門の脇の組織に細菌が感染して膿がたまる病気で、腫れに加えて発熱を伴うことがあり、治療の方針も異なります。自己判断が難しいのは、こうした見分けが必要になるためです。

血栓性外痔核は、肛門周囲の血流が一時的に強くうっ滞したときに起こりやすくなります。思い当たるきっかけとして、次のようなものが挙げられます。
夏の時期に相談が増える背景には、いくつかの事情があります。汗を多くかくのに水分補給が追いつかず、便が硬くなって強くいきむ機会が増えること。冷たい飲み物やお酒の量が増えて下痢を起こしやすくなること。エアコンの効いた室内で長時間座り続け、下半身が冷えて血流が滞りやすくなること。旅行や帰省で長時間の移動が重なることなどです。
反対に、寒い季節も冷えによる血流低下から症状が出やすくなります。つまり血栓性外痔核は、季節を問わず、生活のちょっとした変化がきっかけで誰にでも起こりうる身近なトラブルです。

痛みが出た直後に自宅でできる工夫としては、次のようなものがあります。

市販の痔の薬は、症状をやわらげる助けにはなります。ただし、痔の薬には内痔核向け、外痔核向け、炎症を抑えるものなど種類があり、症状に合っていなければ十分な効果は得られません。数日使っても変化がない場合は、薬を替えながら粘るより、一度診察を受けたほうが結果的に早く楽になります。
痛みだけでなく発熱を伴う場合、しこりがどんどん大きくなる場合、真っ赤な出血が続く場合は、自宅での対処にとどめず早めに受診してください。特に、腫れが肛門のふちだけでなく脇のほうまで広がっている場合や、じんじんと拍動するような痛みが続く場合は、膿がたまっている可能性があります。

当院の肛門科では、まず問診で症状の出方や排便の様子、生活習慣を伺い、横向きに寝ていただいた状態で視診・触診を行います。腫れの位置や大きさ、血栓の有無、内痔核の脱出がないかなどを確認し、必要に応じて指診で直腸側の状態もあわせて評価します。診察は数分で終わり、プライバシーに配慮した環境で行っています。
血栓性外痔核と診断された場合、多くは軟膏や坐薬、便通を整える内服薬による保存的治療で改善します。痛みのピークを越えれば、あとは血栓が自然に吸収されていくのを待つ形になります。
ただし、痛みが強い場合には、局所麻酔をしたうえで腫れている部分を切開し、中の血栓を取り除く「外痔核血栓摘除術」という処置があります。当院ではこの処置を診察時間内に行っており、予約は必要ありません。処置そのものは短時間で終わり、多くの方が処置直後から痛みの軽減を実感されます。同じ日のうちにお仕事に戻ったり、入浴していただいたりすることも可能です。
「痔の手術」と聞くと入院を思い浮かべて身構えてしまう方が多いのですが、血栓性外痔核に対するこの処置は、痛みの原因になっている血のかたまりを取り出すだけのごく短い処置です。当院では、従来は入院で行われていた痔の手術も日帰りで対応しており、入院が必要と判断した場合には責任をもって提携病院へご紹介しています。
なお、痔だと思っていた症状が、実は別の病気だったというケースもあります。特に出血が続く場合は、大腸の病気が隠れていないかを確認しておくことも大切です。当院では大腸がん検診にも対応していますので、気になる症状があれば診察の際にあわせてご相談ください。
再発を防ぐという意味でも、受診には意味があります。血栓性外痔核は一度起こると、同じ生活習慣を続けているかぎり繰り返しやすい病気です。診察の場では、便通の状態や座っている時間、水分の摂り方などを一緒に振り返り、その方に合った予防のしかたをお伝えしています。痔の治療の基本はあくまで保存療法であり、生活習慣を整えることが最も確実な再発予防になります。
肛門の症状は、恥ずかしさから受診が遅れがちです。しかし血栓性外痔核は、早く相談していただければ、その日のうちに痛みを軽くできる可能性のある病気です。日曜の午前も診療していますので、平日に時間が取れない方もご利用ください。
血栓性外痔核は、肛門のふちの静脈に血のかたまりができて急に腫れる痔で、前日まで何ともなかった方が突然の激痛に見舞われるのが特徴です。多くは数日から2週間で自然に落ち着きますが、痛みのピークは発症2〜3日目に来るため、我慢して過ごすには負担の大きい期間があります。きっかけは強いいきみ、長時間の座位、便秘や下痢、冷えなど日常の中にあり、温める・座り続けない・便を柔らかく保つといった工夫が回復を助けます。自分で潰す、強く冷やし続けるといった対処は逆効果です。当院では診察したその日に血栓を取り除く処置にも対応していますので、我慢せずご相談ください。
・日本大腸肛門病学会「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン」
・厚生労働省 e-ヘルスネット「痔核」
・慶元クリニック 肛門科のご案内(https://keimotoclinic.com/proctology/)