2026年7月9日

「なんだか頭がぼーっとする」「吐き気がする」——それ、熱中症の初期サインかもしれません。危険な症状の見分け方と、暑さに負けない体づくりのポイントを慶元クリニックが解説します。

私たちの体は、汗をかいたり血管を広げたりすることで、体内にこもった熱を外に逃がし、体温を一定に保とうとしています。しかし、気温や湿度が高い環境に長時間いると、この体温調節の仕組みが追いつかなくなり、体温がどんどん上昇してしまいます。これが熱中症の基本的なメカニズムです。
さらに、大量に汗をかくことで体内の水分と塩分(電解質)が失われ、血液の巡りが悪くなることで、めまいや立ちくらみ、頭痛といった症状が現れます。重症化すると、体温調節機能そのものが破綻し、意識障害や臓器の障害を引き起こすこともあります。医学的には、症状の程度によって「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」といった段階に分類されており、後になるほど重症度が高くなります。
近年は「屋内でも熱中症になる」ことが広く知られるようになりました。風通しの悪い部屋や、エアコンを使わずに我慢してしまう高齢の方の住まいでは、屋外にいなくても室温・湿度の上昇によって熱中症のリスクが高まります。夜間、寝ている間に発症する「夜間熱中症」も注意が必要です。寝室の温度管理を怠ると、就寝中に少しずつ脱水が進み、朝方に体調不良として気づくケースも少なくありません。

熱中症の症状は軽症から重症まで幅があり、段階を追って悪化していくことが多いです。
めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗
頭痛、吐き気、嘔吐、体がだるい、判断力の低下
意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い、けいれん、まっすぐ歩けない、体温が非常に高い
特に「呼びかけへの反応がおかしい」「様子がいつもと違う」と感じた場合は、重症化している可能性があるため、ためらわずに救急要請を検討してください。汗をかかなくなった、皮膚が異常に熱く乾燥しているといった状態も、体温調節機能が限界に達しているサインであり、緊急性の高い状態と考えられます。また、子どもや高齢の方は自分の不調をうまく言葉で伝えられないことがあるため、顔色の悪さや元気のなさ、食欲の低下といった普段との違いにも周囲が気を配ることが大切です。

エアコンの効いた室内や、日陰の風通しの良い場所へ移動させます。衣服をゆるめ、体から熱を逃がしやすい状態にすることも重要です。
首、脇の下、太ももの付け根など、太い血管が通っている部分を保冷剤や濡らしたタオルで冷やすと効率よく体温を下げられます。うちわや扇風機で風を当てながら、皮膚に水を吹きかけて気化熱を利用する方法も効果的です。
意識がはっきりしていれば、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分と塩分を補給します。ただし、意識がもうろうとしている場合は、誤って気管に入る危険があるため、無理に飲ませず医療機関を受診してください。
これらの処置を行っても15〜30分程度で症状が改善しない場合は、自己判断で様子を見続けず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

熱中症は誰にでも起こり得ますが、特に注意が必要な方がいます。
こうした方は、気温がそれほど高くなくても熱中症を起こすことがあるため、周囲の方が意識して声をかけることも大切です。ご高齢のご家族と離れて暮らしている場合は、暑い日には電話やメッセージで体調を確認する、エアコンをためらわず使うよう声をかけるといった気配りが、思わぬ事故を防ぐことにつながります。

熱中症予防の基本は、「こまめな水分・塩分補給」と「暑さを避ける工夫」です。のどが渇く前に少しずつ水分を摂る、屋外での作業や運動は気温の高い時間帯を避ける、室内でもエアコンを適切に使う、といった対策を習慣化しましょう。
本格的な夏が来る前から軽い運動や入浴で汗をかく習慣をつけておくと、体が暑さに慣れやすくなり、熱中症になりにくい体づくりにつながります。梅雨明け直後や急に気温が上がった日は、まだ体が暑さに慣れておらず特に注意が必要です。
睡眠不足や栄養不足の状態では、体温調節機能が十分に働きません。規則正しい生活も熱中症予防の土台になります。
気温だけでなく湿度や日射量を反映した「暑さ指数」は、熱中症の危険度を判断する目安として役立ちます。予報などで数値をチェックする習慣をつけましょう。
応急処置をしても症状が改善しない場合や、意識障害・けいれんなどの重い症状がある場合は、様子を見ずにすぐ受診・救急要請してください。軽症でも繰り返す場合は、体質や持病が関係している可能性があるため、一度ご相談いただくことをおすすめします。
当院では、点滴による水分・電解質補給が必要な場合の対応も行っております。「病院に行くほどか分からない」という段階でも、暑い時期の体調不良は熱中症が関係していることも多いため、遠慮なくご相談ください。特にご高齢の方やお子さまは重症化しやすいため、早めの受診が安心につながります。
夏場の体調不良は、熱中症以外にも夏バテや脱水を伴う胃腸炎など、似たような症状を示す病気が隠れていることもあります。自己判断で「熱中症だろう」と決めつけず、症状が長引く場合や繰り返す場合は、一度きちんとした診察を受けることをおすすめします。